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SukeraSono4周年記念!シナリオライター対談 淡乃晶×詠野万知子

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SukeraSono4周年記念!シナリオライター対談 淡乃晶×詠野万知子

百合音声サークル・SukeraSonoのデビュー作『メイドインドリーム〜姫様とメイドの甘々生活〜』が発売されてから4年が経った。

リリースした作品は現時点で25本。そのなかで立ち上げから参加し、半数以上の作品のシナリオを手がけてきた淡乃晶氏、淡乃氏に次ぐ作品数を生み出してきた詠野万知子氏をお迎えし、SukeraSono4年間の歩みをシナリオライターの視点から語っていただいた。

淡乃晶氏
淡乃晶

fragment edge主宰。舞台や朗読、音声作品の脚本、演出、プロデュースを手がける。代表作はキミに送る朗読会『春とみどり』、イクニプロデュースReading in the dark『春琴の佐助』など。

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詠野万知子氏
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フリーのシナリオライター。参加した百合作品には『華枕』ノベライズや、タテスクコミックの『剣道娘は異世界でも斬り結ぶ』がある。

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聞き手・編集

えむ

ギャルとホラーを愛する百合ライター。あまーい作品も好きだけど、シリアスで苦味のある作品はもっと好き。百合ゲーム専門メディア「ゆりりかる」、百合漫画ガイド「ゆりりかる漫画部」も運営中。

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聞き手・執筆者

えむ

ギャルとホラーを愛する百合ライター。あまーい作品も好きだけど、シリアスで苦味のある作品はもっと好き。百合ゲーム専門メディア「ゆりりかる」、百合漫画ガイド「ゆりりかる漫画部」も運営中。

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「あなた」とか「きみ」ってなると他人事になっちゃう

――淡乃さんはSukeraSonoの立ち上げから参加されています。どのような経緯でこの企画に関わることになったのでしょうか。

淡乃晶氏(以下、淡乃):はじめに話があがったのは2020年ですね。僕は舞台作家をやっていて、コロナ禍で舞台ができなくなったときに、古賀さん(編注:SukeraSonoプロデューサー)から音声サークルを立ち上げたいので、手伝ってくれないかとご相談いただいて、そこからスタートしました。

音声作品という世界を知らなかったので、いろいろ情報を集めながら作品のなかで何を表現するかをひとつひとつ時間をかけて考えて、2021年に初リリースすることになりました。

百合音声作品は一人称視点と、かけあいのある三人称視点の2種類あると思うんですけど、一人称視点のものからはじめてみようという流れがあったと思います。一人称視点だったらリスナーがロールプレイや想像するなかで、女の子同士の関係性はどうやったら表現できるのか?どうしたら百合音声作品と呼べるのか?っていうのはサークル内で話し合ってました。

第1弾『メイドインドリーム〜姫様とメイドの甘々生活〜』は音声作品の基本的なものを意識して作ったんですけど、そこから徐々に回数を重ねて百合音声作品としての解像度を高めていきました。毎回反省会をして、フィードバックしてつなげていくような形でやってきましたね。

――作品作りの基準はそのなかで生まれたのでしょうか。

淡乃:呼称問題はひとつありました。リスナーを呼ぶ単語って限られていて、「お姉ちゃん」とか「先生」とか「先輩」が没入できると思っていて、それが「あなた」とか「きみ」ってなると他人事になっちゃうとチーム内で話していて、そういう基準はやりながら作ってきました。

――そうして積み上げられた作品数は4年で25作品になりました。改めてラインナップを見て、いかがですか。

淡乃:シリーズ作品もあるんですけど、それぞれ独立している作品でコンセプトも違うので個性豊かだなと思います。色がハッキリしていて、似てるものがあまりないと思います。

詠野万知子氏(以下、詠野):淡乃さんが毎回新しい試みをしているのがいいと思っていて、『図書室ノ恋 ~小声でめくる二人のページ~』では朗読があるじゃないですか。これがすごくうれしくて、この1回しかやらないつもりなのかな?贅沢だなって思ったり。『フユメモリー 〜きみと同棲と夢のつづき〜』だと一緒に大晦日を過ごせるとか、毎回新しいことをするつもりなんだなっていうのにびっくりしたし、それがプレッシャーにもなったんですけど……。

淡乃:シチュエーションごとに、独自の表現ができたら良いなと思っていて。『図書室ノ恋 ~小声でめくる二人のページ~』は、この関係性だったら読み聞かせができたらおもしろいよねみたいな。「百合体験」なので、その子と過ごした時間を音で表現するってなるとシチュエーションの特色とか、出る音の違いとかで、ふたりの関係を表さないといけないなという。

――音声作品である以上、音や音声をどう使うのかは重要な要素ですよね。

淡乃:そうですね。朗読のシーンもそうですけど、『フユメモリー 〜きみと同棲と夢のつづき〜』だと連弾のシーンがあって、あれは本当に編集の北さん(編注:サウンドアーティストの北島とわ氏)と連携をとっているからできることです。百合的なふたりのいい関係性を想起させる、音声作品ならではのシーンになったと思います。

詠野:贅沢!

淡乃:贅沢ですね。あれは本当に気に入ってます(笑)。あと、やっぱり音声作品は編集が仕上げてくれるなと思っていて。音声作品はシナリオがあって、声優さんが演じられて命が生まれて、それを編集が形にしていく。音声作品の大部分の作業は編集にあるなと思っています。

人の会話って唐突だったり、前後のつながりが飛んだりする。そういうのが難しいですよね

――音声作品のシナリオならではの書き方やこだわりはありますか。

淡乃:これは詠野さんもわかると思うんですけど、シナリオメインで書くと起承転結とか、感情とか、テキストそのもので豊かにしようと考えがちじゃないですか。

詠野:ライター的には文章を書いていないのは怖いんですよね。文章を書く仕事だから書きたくなっちゃうんだけど、音声作品はSEがあるところとか、時間が経過する部分とか言葉がいらない場面がすごく多いので、そこは関係各位を信じてやっていくしかない。信じられるからこそ、「SE:シャワーの音」って1行でいける。他にない仕事の仕方だなと思います。

淡乃:たしかに。文字書きの視点で書くと音声作品としてはくどくなっちゃう。だから、物語を語るような要素は僕も意識的に抜くようにしてました。体験してもらうっていうのは意識してますね。

舞台では、役者さんの動きとか演出を信頼して書かないことが多かったので、舞台演劇をやっていた経験も生きてると思います。

詠野:淡乃さんは舞台からきてるので、ASMRと相性がいいと思います。ASMRとはちょっと違うんですけど、私がむかし、はじめてドラマCDのシナリオを書くときに説明的なセリフで状況を伝えなきゃいけないって教わって……。でも、ASMRってそれとは真逆なので。

淡乃:これはチームで話していることなんですけど、ASMRってずっと耳元でささやかれているものなので、ここにはヒロインはいないんだなって思った瞬間に信頼が切れちゃうし、この言葉は嘘っぽいなって感じたら集中が切れちゃう。やっぱり説明的じゃないとか文章っぽくないとかが大事で、正しい文法で書きすぎるとしゃべりじゃなくてただの文章になっちゃうんですよね。

詠野:人の会話って唐突だったり、前後のつながりが飛んだりする。そういうのが難しいですよね。

淡乃:勢いで話してるとか、2回繰り返すとか、途中で詰まっちゃって言い直すとか、そういうのが口語っぽいと思っていて、『Baby Blue -おとなの制服デート-』ぐらいになるとそれが反映されてると思います。

テキストだけは出せない表現なので、基本を崩すことをずっとやり続ける気はします。人間が生きてることをどうやって感じるのか、人間とはなんなのか、生を感じるとはみたいなことを悩みながらやってますね……(笑)。

イラストに声を当てるんじゃなくて、声そのものが作品であるっていうことが音声作品の特徴だなと思います

――収録やキャスティングについてのこだわりはありますか。

淡乃:僕は毎回SukeraSono作品の音声を録るためガイドライン資料を声優さんにお渡ししています。

詠野:声優さんが普段求められるのはノイズを出さない録り方だと思うんです。でも、こちらはリップノイズとか受け入れていく収録なので、切り替えが大変だろうなと思います。

淡乃:そうですね。でも、感覚をつかんでくると、これでいいんだみたいな感じで、みなさん合わせてくれますね。

ニュートラルに極力声を作らない飾らない状態をやっていただけたらと思ってます。その声を引き出せるような準備を、収録前からやってますね。

詠野:自然なしゃべりがほしいから、声優さんのラジオとか普段のしゃべりを聞いて検討するみたいなことをするんですけど、声優さんって基本的にしゃべるのが上手すぎて、ラジオでもバリバリ上手い。そうなってくるとまた選ぶのが難しいなと思います。

淡乃:ラジオもそうですけど、仲が良い声優さん同士でしゃべっているトーク番組とか、気軽な関係の人と笑い合ってる声とか、リラックスしている状態の声をとにかく探しますね。

脚本を書く段階でイメージがはっきりしている時は、当て書きすることもあります。キャスティングができるかは書いている時点ではわからないので、賭けではあるんですが……(笑)。

イラストに声を当てるのではなく、声そのものが作品であるっていうことが音声作品の特徴だなと思います。イラストは作品への導入やガイド的な役割で、内容は声と音。それを聞いた時に浮かんでくるヒロインの姿を楽しんでもらうパッケージなので、アニメやゲームとはまた違うものだと思います。

淡乃さんがイチャラブを書きすぎて病んでますって言われて

――作品の話に戻ります。淡乃さんは徐々に作品の雰囲気が変化していきましたよね。

淡乃:今年で4年目ですけど、自分のなかでは年次でテーマを決めてやってきました。1年目は音声作品を作るのがはじめてだったので、SukeraSonoのブランドイメージを伝えたいというのがあって、キャラクターがお互いに信頼しあっていて、そこに甘い関係があるみたいなことを書いていこうと。詠野さんはご存じだと思うんですけど、僕の今までと作風と若干違うじゃないですか。

詠野:はい。なにか追い詰められた状況でキリキリとした緊迫感のある作品とか、感情の激しいぶつかり合いとかそういうのが特徴だと思うんですよね。淡乃さんの作品で、平和にイチャイチャするのって新鮮でした。

淡乃:音声作品でいきなり絶叫されたらびっくりしちゃうから(笑)。今までのキャリアでは、ずっと生きるか死ぬかみたいなものを書いていたんですが、急におだやかな音声作品を書いたので、5作品作ったあたりで自分的に頭打ちになって。それで詠野さんに相談しましたね。

詠野:古賀さんたちに呼ばれて、淡乃さんがイチャラブを書きすぎて病んでますって言われて。

淡乃:正解がわからなくなっちゃったんですよ。自分に経験がなかったので。それで、詠野さんはかわいいヒロインと一緒にいるところを丁寧に書ける作家さんだと思っていたので、僕から提案させてもらったんですよね。ブランド的にもずっと同じ作家が続くと偏りが出てきちゃうとも思ったので。

――そこからリリースされたのが『ないしょワンルーム ~世話焼き妹と過ごす休日~』ですね。

詠野:実はその次の『雨音キャンバス 〜君を描く梅雨の放課後〜』のほうが最初に出した企画だったんですけど、逆にしたんですよ。理由は忘れちゃったんですけど。なので、『雨音キャンバス 〜君を描く梅雨の放課後〜』は元々は冬だったんですけど、発売時期的にあわせて梅雨に変えました。

――今までの百合体験シリーズ以外に百合観察シリーズとして『ユメリリ 〜 幼なじみカップル観察日記 〜』がリリースされたのもこの時期ですね

淡乃:一人称視点の表現の壁にぶつかっていた時期だったので、一度基本のキをやりたいと思っていて、三人称視点の『ユメリリ 〜 幼なじみカップル観察日記 〜』を書きました。

でも、諸事情でリリースが遅れてその間に『仮恋りみっと 〜期間限定コイビトごっこ〜』を書いたり、『はつこいリターンズ!』の企画を作ったりしていました。

――『はつこいリターンズ!』は今までとは違い、シリーズとなっていましたね。

淡乃:より音声作品を盛り上げるために、連作シリーズを作りたいというのがありました。僕のなかで1年目はセオリーどおりにやる、2年目は新しいことに挑戦するってことで、恋人同士の関係性ではないところからはじまる『仮恋りみっと 〜期間限定コイビトごっこ〜』だったり、今までの概念とは違うアプローチの『イルミラージュ・ソーダ 〜終わる世界と夏の夢〜』を作ったり、激しい年でしたね。

詠野:そういうなかで私が2年目から参加した意義は淡乃さんが挑戦している傍らで定番っぽいところを続けていくことなのかなと思って頑張っていました。

――すごくバランスがよかったと思います。淡乃さんが挑戦して、詠野さんが戻ってくる場所を作っていたように感じました。

詠野:淡乃さんは本当にすごい挑戦してると思っていて、『イルミラージュ・ソーダ 〜終わる世界と夏の夢〜』が出たときに私には絶対できない作風で、淡乃さんらしいじゃないですか。これが私の見てきたfragment edge(編注:淡乃氏を中心に結成された舞台演劇団体)の味がする作品だと思いました。

淡乃:『イルミラージュ・ソーダ 〜終わる世界と夏の夢〜』のライナーノーツにも書いてますけど、『仮恋りみっと 〜期間限定コイビトごっこ〜』の収録が終わった後に、古賀さんから「淡乃さんが本当にやりたい企画をやっていいですよ」って言っていただいて。じゃあいろんな枠を外してみようかなと思いました。

今までやってきた音声作品の表現と自分がやってみたい要素を組み合わせた表現として終末音声が生まれました。作っている間は強烈な時間でしたね。

詠野:舞台化してほしいです。みなさんはイヤフォンとかヘッドフォンで聴いてると思うんですけど、舞台に行くと全身で音を浴びるじゃないですか。それを体験したいのは『イルミラージュ・ソーダ 〜終わる世界と夏の夢〜』だなって。

淡乃:サカナは、実体として現れなくて、お客さんは舞台だって言われて行ったら、誰もいない部屋に通されるみたいな。「先生、どうしてここに来たの?来ちゃダメだよ」みたいなことを言われそう……(笑)。

――『イルミラージュ・ソーダ 〜終わる世界と夏の夢〜』はいろんな方の心に残る作品ですよね。受け手として聴くたびに思いを巡らせたくなる。

淡乃:作品の内容が内容だけに最初にふれたときの感覚を大事にしてもらいたいから、あんまり種明かしっぽいことはしないようにしてます。リスナーさんもそういう気持ちが強くて、あえて言わないでいてくれるんですよね。トラックになにが入っているかってあまり言及されてなくて、それ故に広がらない部分もあると思うんですが……。しかしそれも大事で……(笑)。書いた人が語るみたいなものが聞きたい人がいれば、特集とかできるんですけど……。

キャラクターには都合が良すぎない人間らしさがあってほしいですね

――そういう声があったら、ぜひゆりりかるボイス部で企画をやりましょう!詠野さんはこの期間に数多くの作品をリリースされてますよね。

詠野:この時期は隔月で出そうみたいな感じで、立て続けに制作させていただきました。続けてみてわかったのは、私はやっぱり素直な愛情表現が好きなんだなってことですね。

淡乃:素敵ですよね。シチュエーションが良いです。『はじめてのサボタージュ 〜あなたのとなりで息をする〜』とか。

詠野:私、元ヤンのキャラがすごい好きで、漫画とかによくいるお母さんキャラが実は元ヤンみたいなのがめちゃくちゃ好きなんです。

淡乃:あの感じは僕には書けないんですよ。この年に甘い系だと『澪菜さんは甘やかしたい 〜隣に住んでるお姉さんに看病される話〜』を書いてるんですけど、詠野さんとは全然違いますよね。僕は強気だけど実は弱い部分もあるみたいなギャップが好きで。

詠野:なんか、包容力があって、なんでも許してくれて、すごくやさしいってなると現実感のある人間から遠ざかってしまいますよね。もはや女神様みたいな……なのでキャラクターには、都合が良すぎない人間らしさがあってほしいですね。

――ここまでの淡乃さんの路線からすると、『澪菜さんは甘やかしたい 〜隣に住んでるお姉さんに看病される話〜』は原点回帰っぽい雰囲気があります。

淡乃:そうですね。もう一度ストレートなものに戻そうってご提案をもらって書いたんですけど、甘いだけじゃなくて、ちゃんと自立していて、弱さもあって……、だけどあなたと一緒にいたいんだよって、なんか愛らしいなと思って書きましたね。

澪菜さんは年の差を気にしていて、そこに人間味があるよねって。未だに澪菜さんが好きだって言ってくれる方は結構多いですね。実は唯一、関係性を明示してないんですね。あとは、「かわいい」とか「好き」ってあまり言わないルールを作って書いてました。

詠野:たしかに、そんなに「かわいい」って言うかと言われると……。

淡乃:結構使いがちなんですけど、罠なんですよね。たとえば、テンションが高いキャラクターだったら「かわいい~」とか「好き~」とか言うと思うんですけど、落ち着いた大人の女性がいきなり言うかとか、意識してるなら言わないかなとか。澪菜さんもほとんど言ってないと思います。1カ所だけあったかな?くらい。

詠野:私が勝手に思ってるだけかもしれないんですけど、淡乃さんのポリシーとして、キスするときに前振りしないみたいなイメージがあるんですけど、あれもスタイルなのかな。

淡乃:え、全然気づいてなかった。ムード作りはあんまりしないかも。

詠野:自分は「キスしていい?」ってセリフ、結構書いちゃってたなって思って。でも、私はそう言われてからキスするシーンが好きだからいいかって。

淡乃:もう「キスしていい?」ってセリフがサビですよね。そのセリフ自体がキスやん、みたいな(笑)。キスシーンを盛り上げるのは物語としてはやるんですよ。到達感があるし。

『はつこいリターンズ!』では若干やっていて、そろそろ来るぞみたいなクライマックスがある。でも、生活するとか、恋人関係って前提があったときに、もう何年経っていて何回もしてるだろうなって思うとショートカットしちゃうかも。

詠野さんのツボは飾らない女性なんだろうなって感じがします

――続いて3年目は、詠野さんの『夜桜ほろ酔いお姉さん ~きみといっしょに、乾杯したい~』からですね。

詠野:『夜桜ほろ酔いお姉さん ~きみといっしょに、乾杯したい~』はちょっといつもとは違うキャラにできたらいいなって感じで、テキトーな大人への憧れが入ってます。『一緒にはじめるデュオキャンプ』では、ワンコみたいな女の子が好きだと思いながら作ってたかな。

淡乃:このころから、詠野さんが自由に書きはじめた印象がありますね。詠野さんのツボは飾らない女性なんだろうなって感じがします。

――淡乃さんは3年目、いかがでしたか。

淡乃:特殊でしたね。『はつこいリターンズ!~ミステリアス声優は上手く喋れない~』『ちゅーりっぷ×わんだー! ~キスしないと出られない部屋~』『はつこいリターンズ!~はらぺこお嬢様は恋を知らない~』『Baby Blue -おとなの制服デート-』なので。

この時期から舞台を再開して、ちょっと本数が減ったんですけど、作品は実験作を出せたかな。リスナーが「淡乃さんこういうのやるの?」言ってくれるものを試したりとか。聞き手が記憶喪失というまっさらな状態にして、いかに没入できるシチュエーションを作るかは『ちゅーりっぷ×わんだー! ~キスしないと出られない部屋~』でやったんですけど、すごく聴きやすいなと思いましたね。

『Baby Blue -おとなの制服デート-』は自分のなかで決定版だと思っていて、自分が百合音声作品として考える、ASMRの要素、情緒感が一体になって表現できてるかなと。今までやってきたノウハウを注ぎ込んだタイトルなので、めちゃくちゃ気に入ってますね。

――お芝居が自然で、引き込まれました。

淡乃:稗田さんのお芝居が本当にナチュラルで、素敵なんですよ。やりたかったことが叶った嬉しさがありましたね。

普段背負いすぎている役割を取り外して解放されることが、実は人間の救いなのかもなって究極的に考えたりして

――その後に『花様年華 -少女に飼われるペットな私-』がリリースされました。

詠野:作中で名前を付けちゃえばいいんだっていう発想がすごいですよね。呼ばれたいですよね、名前。

淡乃:これは気づきでしたね。音声作品を書くなかで、最初は実生活に似ている体験がいいのかなと思っていたんですけど、リアリティのあるちょっと特殊な体験をすることが、音声作品の可能性かもと思ってきて。

『花様年華 -少女に飼われるペットな私-』では、ちょっと危険かもしれないけど、ペットになることで人間の役割から全部降りてしまうとか、自我がなくなるとかそういう普段背負いすぎている役割を取り外して解放されることが、実は人間の救いなのかもなって究極的に考えたりして。

「あめ」として雪音ちゃんのペットになることが僕なりの癒やしのアプローチとしてやってみました。音声作品は癒やしのジャンルに引きがある。じゃあ、僕ならこうかなって考えて作った作品ですね。

――作中で、あめは完全にペットして愛でられていますよね。

淡乃:ペットになる特殊な体験にしようってアイディアではあったんですけど、それはあくまで人間って役割を外すためで。ペット的な行為をどこまでやっていいのかは悩みました。

首輪を付けて散歩するシーンとかは特殊ですよね。でも、外からの目に対して、雪音ちゃんが守ってくれたりして、それがうれしいみたいなところもある。

詠野:普段の生活と全く違う世界に行けるっていうのはすごくいいですよね。実生活をエミュレートしすぎると、それはそれで都合が悪いところもある。だから、思い切って外の世界に連れていくのはアリなのかもしれない。今後、その方向もやってみたいなって、ちょっと思いました。

――詠野さんの直近の作品は『ふたりで紡ぐ朝と夜~7days breaths~』ですね。

詠野:3年くらいかけてようやく理想を形にできたなと思って、うれしかったです。もう話になんの起伏もなくて、ただ生活しているふたりの様子をやるのがこんなに難しいとは思わなかった。

淡乃:同じサークルでシナリオを書いてるのに、全然違う発想のふたりがいる(笑)。

音声作品の新しい可能性を開拓していきたい

――今進行している作品があれば、言える範囲で教えていただけますか。

淡乃:頑張って今年中に出したいなって作品がひとつあります。もうシナリオは半分以上書けていて、あとは詰めていくだけという感じです。テーマ的には時間に関するお話ですね。音声作品としてはまた新しいアプローチになっているので、楽しみにしてもらえたらうれしいなと思います。独特な道を辿ってきたSukeraSonoの4周年はまだまだ終わらんぞ!ということで……今読んでいる人に語りかけてます(笑)。

――急なメタ展開が(笑)。詠野さんは4周年を迎えたSukeraSonoについてどのように感じていますか。

詠野:去年から私たち以外にも参加するライターさんが増えて、より広がりが出てきている感じはありますよね。

淡乃:より自由に、より新しく。知ってる人が通ぶれるじゃないですけど、私はSukeraSonoの良さを知ってるよって言えるような、独自性を追求していきたいですね。あとはボーイッシュな人がやりたい。マジでやりたい。

詠野:ボクっ娘も解禁されたし。

淡乃:志水先生がね(編注:志水はつみ氏による『高千穂アキラのレンアイ怪談』)。あとは失恋ものがやりたい!情緒がめちゃくちゃになって僕はもう滅びた!みたいな気持ちになりたい(笑)。逃避行百合もやりたいし、ひたすら重いのもやりたい。でも、どんどんSukeraSonoのテイストではなくなってしまうので……。

――いや、なんなら淡乃さんにはそれを期待している人が多いような気がしますけど……。

詠野:リスナーもなんとなくわかってきてるんじゃないですか?

――詠野さんがいらっしゃるので、サークルとしてバランスが取れてますよ。

詠野:バランス取れてたらうれしいです!

淡乃:詠野さんにお任せしちゃってる……。SukeraSonoさんの懐の大きさでこうなってるんで、まだ買ってない旧作があたらぜひ手に取って応援してくれたら嬉しいですね。よかったら人に薦めてもらえたら……!

――そういえば、淡乃さんはリスナーの方から質問をもらっているんですよね。

淡乃:そうですね。「録音の音声作品を作る上で1番気にしてるところはどこですか?時間を許す限りリテイクとか調整ができてしまいそうですが、なにをもって完成とするのかといった要素があれば教えてください」とガチめな質問をいただいています。

時間内に収めることはもちろんですが、僕は収録を素材録りだと思ってます。どれだけの素材を編集に渡せるかみたいなところで。素材がないと編集の段階で、選択肢がないじゃないですか。たとえば、通常テイクとウィスパー気味のテイクがあれば、後でバランスをみて差し替えられるとか。それをシナリオに記載しておくことも大事で、録りたいワードとか、素材の指定を書いておく。

詠野:淡乃さんって寝言のトラックも、これ入れてくださいって書いてますよね。「むにゃむにゃ」とかじゃなくて、なにか言ってほしいみたいな指定が。

淡乃:入れてほしいときは書いてます。基本、収録でできることはテキストに書いてあることまでになってしまうので、できるだけ詰めておくことが大事ですね。なにをもって完成とするかは、編集で完了させると思ってるからな……。

――リテイクは結構あるんでしょうか。ここ最近SukeraSono関連のインタビューではリテイクはそんなにないと伺ってますが。

詠野:質問者の方が想像されてるよりもリテイクはやらないような気がします。本当に技術的なノイズが入っちゃったときはリテイクしますけど、演技がイメージから外れているというリテイクはあんまり重ねないかなと思って。私はそんなにしてないです。

淡乃:基本的に1発ですよね。よほど意図が違うときは言いますが、あとは素材として使えるものを数パターンぐらい。宅録(編注:自宅で録音すること)ではないので、短時間にどこまで詰め込むかはありますね。

詠野:私は声優さんの技術力に圧倒されてばかりなんですよね。最初にキャラクターのすり合わせをしたら、あとはお任せみたいなところがありますね。あとはさむさん(編注:SukeraSonoの演出、ディレクター)がディレクションしてくださるので、その時点でだいたいこちらから言いたいことはなくなります……(笑)。ありがとうございます。

――ありがとうございます。では、最後に今後の抱負をお願いします。

詠野:素直な感情が出る癒しの作品はまたまたやっていきたいなと思いつつ、余裕があったら挑戦もしたいですね。

淡乃:音声作品の新しい可能性を開拓していきたいというのがあります。百合という表現の中で生まれる感情とか、関係性とか、ときめけるものを世界に発信していきたいですね。

『さいはてのペルシュ』6月13日から公演スタート!

――せっかくなので、この機会に淡乃さんの舞台をぜひ!

淡乃:6月13日から上演する『さいはてのペルシュ』は音声作品っぽい要素もある舞台なんですよ。リスニングみたいな感覚もあって。

詠野:それはSukeraSonoファンが行ったほうがいいやつ。

淡乃:自分の音声作品の原点っぽいところにもふれられると思います。生で体感する百合をぜひ楽しんでもらえたらうれしいです。

【舞台情報】

さいはてのペルシュ

fragment edge No.9
『さいはてのペルシュ』

企画・脚本・演出:淡乃晶

CAST:楠世蓮、東城咲耶子、梅原サエリ、月城莉奈、谷尻まりあ
Sound material produce.音楽:北島とわ / Portowal birch

日程:2025年6月13日(金)~ 6月15日(日) 全6ステージ
会場:下北沢ハーフムーンホール

チケット:https://t.livepocket.jp/t/perche
特設ページ:https://fragmentedge.localinfo.jp/pages/482101/perche

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