『【百合】先輩の人生が私のものになる話』は2022年9月にリリースされた安穏剣呑のデビュー作だ。
バレーボール部の新入部員である鏡花が先輩・朋絵と一緒に過ごすなかで、彼女の本当の姿に気づき、惹かれていく。
少し苦味のあるストーリーやボイス、キャラクターすべてが際立っており、ビターな味わいを求める方にはぜひ聞いてほしい作品だ。
この記事では『【百合】先輩の人生が私のものになる話』のレビューをお届けする。



鏡花と朋絵、ふたりともボイスあり。いわゆる壁百合系の作品です!
トラックリスト
1.鏡花、目撃する (3:24)
部活帰りのふたり。鏡花は先輩の寝言を聞いてしまい、意外な一面を発見する。
2.鏡花、問い詰める (2:47)
部活の休憩時間。鏡花は以前聞いた寝言を持ち出して「先輩、最近頑張りすぎて疲れてるんじゃないですか?」と心配する。寝言のことは黙っていてほしいと言う朋絵。ふたりは秘密を共有することになる。
3.先輩、見られる (9:47)
ふたりきりの朝練。片付けに行ったきり戻ってこない先輩を心配した鏡花は体育倉庫へ向かう。そこで先輩のオナニーを目撃してしまう。
4.鏡花、先輩を思う (7:42)
就寝前。鏡花は先輩のオナニーを思い出してムラムラしてしまい、自ら秘部にふれる。
5.二人、抱き合う (29:04)
先輩の家でデート。鏡花は朋絵が今まで抱えてきたものを受け止め、初えっちする。
6.二人、寄り添う (5:19)
事後、結ばれた多幸感を味わいながら、新たな人生の一歩を踏み出す。
レビュー
「本当の私を見て欲しい」先輩の切なる願い
本作は”救い”を描いた物語だ。そのなかで筆者が注目したのは朋絵が抱える「偽りの自分で生きることのツラさ」と鏡花による救済だ。
先輩である巻名朋絵はバレーボール選手として評価はされているが、少し近寄りがたい存在であり、周囲からは“漆黒の魔女”と呼ばれている。
終盤で明かされるとおり、朋絵はバレーボールを嫌っている。選手だった父から厳しく指導され、結果を出したときだけ褒めてもらえる。そのためだけに頑張り続けている。バレーボールは愛情を受け取るための作業に過ぎない。周囲からの期待に答えるべくして生まれたのが”漆黒の魔女”なのだ。
そんなニセモノの朋絵を壊しにかかるのが、後輩部員の十恵鏡花だ。
下校途中に電車で朋絵の「もっとぎゅーってして」という寝言を聞いてしまった鏡花。後日、その秘密を共有して距離を縮め、「漆黒の魔女は先輩に似合ってない」「本当の先輩は甘えんぼうで強がり」だと指摘する。
誰もが朋絵を漆黒の魔女として見ているなかで、鏡花だけは「甘えんぼうで強がりな」本当の自分を見てくれていた。それに気がついたことで、朋絵のなかで、鏡花の存在は大きくなっていく。
本作のハイライトとなるのがおうちデートのシーンだ。堰を切ったように思いがあふれ出す朋絵の語りには、これまでのツラさが反映されていたし、その思いをやさしく受け止める鏡花の存在が頼もしく思えた。
鏡花に「自分を傷つけるのはやめよう?」と言われたところで、二つ返事でやめるとなるわけではない。朋絵自身のアイデンティティであったバレーボールはかんたんに捨てられるものでもなく、そこに恐れを感じる描写からは偽りの自分を捨てる痛みも伝わってくる。
朋絵が本当の自分として生きられるようになるまでの過程を真正面から描いたストーリーは心に残る忘れられないものになった。
アンバランスだからこそ浮かび上がる先輩の魅力
抑圧されていたからなのか、朋絵からはインモラルな雰囲気が漂っている。
メンタルの不安定さは作中のところどころで顔を覗かせているし、本作の結末も見方によっては依存する対象をバレーから鏡花に変えただけに思える。朋絵は今後もなにかにすがって生きていくのではないかと感じてしまう。
一方で、朋絵のメンタルがアンバランスな状態にあることで、性的な面ではさまざまな姿が引き出されている。
ポイントとなるのは2つ。1つ目は体育倉庫でのオナニーだ。朋絵はバレる危険を冒しながら行為に及ぶ。鏡花に見つかってしまった後も、「鏡花ちゃん」と名前を呼びながら秘部をさわり、手を握ってほしいとお願いまでする。
ダメだと分かっていても抑えきれずにオナニーしてしまうスリルと劣情。祈りとも思えるような切ない声で「鏡花ちゃん」と呼ぶ姿、震える手。大胆でありながらも弱く、繊細な姿を見せるシーンだ。



浅木式さんの甘くて切ない「鏡花ちゃん……」が最高なのよ!
2つ目はおうちデートでの初えっちだ。朋絵は心の内をさらけ出した後、「自分は傷ついているのに鏡花ちゃんだけキレイなのはズルい」と迫る。(了承を得ているとはいえ)半ば強引に指を入れ、血をすする。
やさしくささやきながら、入れる指の数をどんどん増やしていくSっぽい部分と惚けたように血に吸い寄せられていくインモラルな一面。弱々しくオナニーしていた姿とはまた違った妖艶さを感じさせるシーンだ。
精神的な不安と性的倒錯をリンクさせた物語や浅木式さんの演技によって、さまざまな表情を見せる朋絵は魅力的に映った。



えっちのときはSっぽい責めなのが、また良いよねー!
ぶっきらぼうな後輩の切ないえっちボイスは破壊力抜群
鏡花は「こんな子がいたら……」と思わせる、頼れる後輩だ。
部活の片付けを率先して行ったり、朋絵が頑張りすぎていないか心配したり、朝練前に律儀に先輩を待っていたり。朋絵からもちゃんとしているところが好きだと言われている。
自己を確立していて、流されないところも良い。周囲からのイメージで判断するのではなく、本質を見い出せる。ダメだと思ったり、違うと感じたら、先輩相手であっても自分の意見をハッキリと伝えられる強い子だ。
おうちデートで感情があふれてしまった朋絵を支え、すべてを受け入れるシーンからは鏡花の懐の深さも見て取れる。



精神的には鏡花のほうがずっと大人なんだよね。これは惚れる。
会話はなんとなくぶっきらぼうな感じなのに、照れてタメ口になるところがかわいいし、えっちのときの積極的なんだけど、責めは甘い感じでギャップがあるところも良い。
特に鏡花がオナニーをするシーンが忘れられない。体育倉庫での朋絵のオナニーを思い出し、朋絵の体温や声を思い浮かべながら自慰にふける鏡花の切ない声が想像以上にえっちで、このトラックだけでも買う価値があると思えた。
普段の姿からえっちなところまで、本作には鏡花のかわいさがつまっている。



思ちぽさんの声が、ぶっきらぼうな感じから切なボイス、甘いえっちボイスまで鏡花のキャラクターにドハマリしてるんだよなー!
総合評価
『【百合】先輩の人生が私のものになる話』は、周囲から求められる自分であろうとすることに息苦しさを感じていた少女が、理解者と結ばれて新たな人生への一歩を踏み出す姿を描いた百合音声作品だ。
青春ラブストーリーものでありつつも、ビターなストーリーや影のあるキャラクター像からはインモラルな雰囲気が漂う。先輩・後輩ともに多面性のある人物であり、それがえっちなシーンにも反映されることで、より妖艶さが感じられた。
効果音が少なく、舞台を印象付けるには少し物足りなかったように思えるが、声優さんのボイス・演技もキャラクターにハマっており、特に切ない声には抗いようのない魅力があった。
苦味のある作品が好きな方に、ぜひおすすめしたい百合音声作品だ。
壁百合系
先輩・後輩
学校
あまあま
日常
恋人同士
初体験
ヤンデレ
インモラル
『【百合】先輩の人生が私のものになる話』


- 発売日:2022年9月25日
- 価格:1,100円
- サークル:安穏剣呑
- シナリオ:安穏剣呑
- イラスト:スキア
- 声優:思ちぽ / 浅木式
- 年齢指定:18禁
- 収録時間:58分3秒
※2023年8月10日時点



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