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fragment edge No.9『さいはてのペルシュ』観劇レポート

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『さいはてのペルシュ』観劇レポート

fragment edgeによる舞台公演『さいはてのペルシュ』が、2025年6月13日から15日まで、下北沢・ハーフムーンホールで上演された。

企画・脚本・演出を務めるのは淡乃晶氏。最近では百合音声作品のシナリオライターとして活躍しているが、そのルーツは舞台演劇にある。

fragment edgeとしての本公演は、2019年の『禽獣のクルパ -Avalon-』以来、6年ぶり。待望の新作となった本作では、淡乃氏と百合音声作品でもチームを組んできたサウンドアーティストの北島とわ氏(Portowal birch)も参加し、音と言葉を緻密に絡めた演出が展開された。

本記事はfragment edgeの協力で作成しています。

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取材・執筆

えむ

ギャルとホラーを愛する百合ライター。あまーい作品も好きだけど、シリアスで苦味のある作品はもっと好き。百合ゲーム専門メディア「ゆりりかる」、百合漫画ガイド「ゆりりかる漫画部」も運営中。

X (旧Twitter) 詳しいプロフィール

取材・執筆者

えむ

ギャルとホラーを愛する百合ライター。あまーい作品も好きだけど、シリアスで苦味のある作品はもっと好き。百合ゲーム専門メディア「ゆりりかる」、百合漫画ガイド「ゆりりかる漫画部」も運営中。

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終末世界に響く小さな呼吸―― 『さいはてのペルシュ』の物語構造と演出

物語の舞台は終末が迫る地球。環境の変化により住める場所が減り、人々は「ドーム」と呼ばれる人工のシェルターで暮らしている。そんな時代に、あえてドームの外にあるカフェ「ペルシュ」に集う女性たちの姿が描かれる。

ペルシュの店員・スイ(楠世蓮)は詩集の出版を勧められているが、恋人のサラ(月城莉奈)にはその話を打ち明けられずにいる。配送業とカフェの仕事をかけ持ちしているアイネ(梅原サエリ)は長年想いを寄せている店長のマユリ(東城咲耶子)に気持ちを伝えられずにいる。マユリはカウンセラーとしても活動しており、ペルシュの店員兼居候のキコ(谷尻まりあ)を受け持っている。

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冒頭のアナウンスによって、この場所が「地球博物館ヒューマンシアターペルシュ」であることが告げられ、観客は空に輝く「星」として、静かに物語を見守る役割を与えられる。観客はドレスコードとして指定された黒い洋服を自宅で着てくる時点から、すでに作品の世界に巻き込まれている。

アナウンスが終わると、舞台上に5人のキャストが静かに姿を現すと深呼吸をはじめる。やがて、ひとりずつ語りはじめた言葉がゆっくりと重なり合い、アンビエントな音と混ざり合っていく。四方から響く音、キャストの小さな声、呼吸音――。それらすべてが複雑に絡み合い、「音」としてひとつのまとまりを作っていく。筆者はその音に包まれ、不思議な感覚のなかへと引き込まれていった。

『さいはてのペルシュ』観劇レポート01

レポート――感情は音に、関係は影に。言葉の先にあるもの

本作では、音の使い方が非常に印象的だった。舞台上で紡がれる言葉に音が寄り添い、かき乱す。息を吸うように流れるサウンドがキャストの呼吸と共鳴する。さまざまな音が物語のなかに溶け込み、観客の心を静かに揺さぶる。どこか不安を感じさせるような空気もあり、それが舞台に奥深さを生んでいた。

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登場人物たちの想いや関係性は、断片的なやりとりの積み重ねによって、観客の想像に委ねられていく。それによって、彼女たちの仕草や言葉の裏にある感情に自然と目が向く。

明るくふるまいながら葛藤を抱えるスイ、みんなを姉のように見守る一方でマユリとの関係には踏み出せないアイネ。それぞれの人物が多面的に描かれていくことで、自然と心が引き寄せられていく。

照明に照らされたキャストの影が舞台の壁に映し出され、繊細な所作のひとつひとつが美しく浮かび上がる。クラシカルなメイド服の揺らめきに目を奪われ、抱きしめる、もたれかかる、ふと触れる。そんな瞬間に重なり合う影は、登場人物たちの心の結びつきを現しているように感じられた。

『さいはてのペルシュ』観劇レポート06

とくに印象的だったのは、スイとサラが互いに「かわいい」「素敵」と褒め合う場面。日常のなかのごく短いやりとりだが、多幸感に満ちた瞬間がキラキラとまぶしかった。

また、言葉にできない弱さを見せるアイネに対して、マユリがしりとりで言葉を引き出そうとする場面には、長い時間をかけて形成された「近づけない距離」を飛び越えたいという、静かな祈りのようなものが宿っていた。

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『さいはてのペルシュ』は「終末」という言葉が持つ絶望感とは裏腹に、日常のあたたかさと穏やかな時間が丁寧に描かれている。世界の終わりが避けられないとしても、誰と生きるか、何を大切にするかを見つめ直すこと。それこそが本作の根底にあるテーマなのではないだろうか。

終演後、客席に「お出口はこちらです」とアナウンスが響いても、しばらく誰も動こうとしなかったのは、その余韻の深さゆえ。あの日のカフェに流れていた穏やかな時間を、ずっと記憶に留めておきたい――そう思わせる舞台だった。

写真/香月梨沙
※写真はゲネプロ時のもの

【公演概要】

さいはてのペルシュ

fragment edge No.9
『さいはてのペルシュ』

企画・脚本・演出:淡乃晶

CAST:楠世蓮、東城咲耶子、梅原サエリ、月城莉奈、谷尻まりあ
Sound material produce.音楽:北島とわ / Portowal birch

日程:2025年6月13日(金)~ 6月15日(日) 全6ステージ
会場:下北沢ハーフムーンホール

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