『【百合体験】ふたりで紡ぐ朝と夜~7days breaths~』はSukeraSonoが2024年7月にリリースした百合音声作品だ。
“私”は地元で一緒に育った幼なじみ・羽衣(うい)と恋人になった。大学進学を機に地元を出て、一緒に暮らしはじめる。
本作で描かれるのは大学2年生になったふたりの日常だ。寝室を舞台に紡がれる朝と夜の場面は何気ない日常のワンシーンだけれど、ふたりにとってはかけがえのないもの。聴いていて心地がよく、やすらげる作品だ。
この記事では『【百合体験】ふたりで紡ぐ朝と夜~7days breaths~』のレビューをお届けする。
本記事はSukeraSonoから商品を提供いただき、作成しています。
トラックリスト
1.【Day1】月曜日の朝、今週の計画 (8:47)
二度寝の誘惑に抗って、「いっせーの」で起きようね。
2.【Day1】月曜日の夜、あたたかい背中 (7:01)
明日からバイトも忙しいし、ぎゅーってして充電させてー。
3.【Day2】火曜日の朝、ベッドのなかからお見送り (3:01)
んん……え?もう出かけちゃうの?いってらっしゃーい。
4.【Day2】火曜日の夜、おかえりの口づけ (2:27)
あ、ごめん。起こしちゃった?寝てていいよー。
5.【Day3】水曜日の朝、寝かしつけるリズム (5:54)
んーだめーここにいてよー寝ちゃえよー。
6.【Day3】水曜日の夜、壁越しの気配 (12:24)
まだ起きてたんだ!お風呂めんどくさいけどがんばる……。
7.【Day4】木曜日の朝、忘れものに注意 (4:04)
起きるー起きるからーって、時間やばい!
8.【Day4】木曜日の夜、寝る前のお手入れ (14:22)
爪が伸びた頃じゃない?お手入れはじめるねー。
9.【Day5】金曜日の朝、約束のデート (5:33)
朝だよー起きてー、今日はどれ着る?カフェで朝ごはん食べるの楽しみー。
10.【Day5】金曜日の夜、わるだくみのプリン (5:32)
ねえねえ一緒に悪いことしようよ。プリン買ってきちゃった。
11.【Day6】土曜日の朝、ゆっくり過ごす (6:35)
この時間が好き。好きなように過ごしてるって居心地いいよね。
12.【Day6】土曜日の夜、愛を揉みこむ (7:19)
おかえりー!お風呂入った?よしよしちょっと凝ってるね。
13.【Day7】日曜日の朝、二度寝のお誘い (3:29)
まだ寝てる?添い寝のお誘い?せっかく早起きしたのにー。
14.【Day7】日曜日の夜、寝る前のおたのしみ (12:23)
憧れのアロマオイル買ってみちゃった。いいにおい。
15.【First Day】ふたりの寝室 (6:04)
今日からここでふたりの生活がはじまるんだね。
16.特典トラック:寝息(右側) (30:06)
17.特典トラック:寝息(左側) (30:06)
18.特典トラック:寝息(正面) (29:40)
レビュー
しゃべらない時間が作り出す「日常っぽさ」
本作で印象深いのは「間の使い方」だ。
音声作品はその名のとおり、ボイスありきで作られる。間が生まれることで、聴き手はあれ?音が途切れてるのかな?と不安を感じる。作り手は不安を抱かせないように間を埋める。
間は短くても長くても違和感がある。作中の間をいかに上手くコントロールできるかが、制作側の腕の見せどころだ。
本作では、”私”(聴き手)と羽衣の間に会話のないシーンが数多くある。朝起きて、呼吸だけで羽衣の存在を感じたり、爪のお手入れ中に羽衣の鼻歌だけが聞こえたり。話はしていなくても、ふたりの距離の近さが感じられ、仲良く過ごしていることが伝わってくる。
特筆すべきは「【Day3】水曜日の夜、壁越しの気配」だ。
遅く帰ってきた羽衣がお風呂に入る。それを待つ間、”私”は寝室のベッドの上で読書をする。聞こえてくるのは壁越しのシャワーの音と羽衣のひとりごとが少々、そして”私”が本のページをめくる音だけ。同じ屋根の下で暮らしながら、それぞれが自分の時間を過ごしているシーンだ。
一緒に暮らしていてもずっとしゃべり続けているわけではない。会話がないことで描かれる日常がより自然なものに見えてくる。本作を象徴するシーンだ。
間については制作のおふたりにもお話を伺いました!
最強「2度寝星人」が繰り出す安眠の誘い
朝と夜を描いた本作には羽衣の眠る描写が多い。
朝起きてスマホを持ったかと思えば、2度寝、3度寝しかけたり、夜は”私”にトントンしてもらって寝落ちしたりと羽衣の寝息を聴く機会が複数ある。
前述のとおり、私たちが過ごしている現実の日常と地続きに感じられる「ふたりの日常」はリラックスできるもの。そこに完璧な寝息が入ってきたら睡魔に抗えるわけがないのだ。
“私”になって羽衣と過ごすつもりで聴きはじめた筆者だったが、気持ちよさそうな寝息に誘われ、羽衣と同じタイミングで寝落ちしたり、「わっ、やばっ」の声で飛び起きたりして、羽衣と同化した自分に少し笑ってしまった。
それもこれも全部”私”の仕業だ。
日曜日の朝、せっかく早く起きた羽衣を襲うのが”私”からの布団への誘い。抵抗(する風)の動きを見せたものの、羽衣は「2度寝星人」に捕まってしまうのだ。
聴きながら寝てしまうのは”私”が羽衣を安眠させる技術の高さゆえなのだ。私は悪くない……私は……ねむねむ……。
安眠レベルはSukeraSonoイチかも!
散りばめられた言葉の「かわいさ」
シナリオの詠野さんの言葉は藤田さん(羽衣役)の演技によって輝きを増している。
たとえば、ベッドでゴロゴロしているとき、羽衣が”私”にSNSを見せて「クリームソーダも、見てこれ。きらきら」と言うシーン。
「きらきら」という表現から透き通ったメロンソーダの気泡がグラスいっぱいに広がっている様子が伝わってくるし、藤田さんの発する「きらきら」の儚いトーンから気泡の輝きが感じられる。
羽衣が遅く帰ってきた日、”私”がまだ起きているとわかると「寝ない子、だーれだ?」とかまってくる。本当はうれしくて甘えた声を出してもいいシーンだが、声色はちょっと落ち着いたものだった。それによって、羽衣のうれしいという感情だけでなく、ふたりだけの空間に戻ってきてほっとしている様子が見えてくる。
藤田さんの演技は絶えず調整されていて、声色や呼吸からつぶさに羽衣の感情を表現していた。
総合評価
『【百合体験】ふたりで紡ぐ朝と夜~7days breaths~』は大学生ふたりの日常を描いた百合音声作品だ。
音声作品でありながら、会話に頼り切ることなく会話の間や環境音を絶妙に配置し、ふたりのリアルな日常を表現した。
かわいらしい言葉が散りばめられたセリフは藤田さんの演技によって磨かれ、たった一言のセリフでさえもきらきらと輝いていた。
作品を聴きながら眠りたい人や、やすらぎを得たい人にぜひおすすめしたい百合音声作品だ。
夢百合系
幼なじみ
日常
『【百合体験】ふたりで紡ぐ朝と夜~7days breaths~』
- 発売日:2024年7月12日
- 価格:1,430円
- サークル:SukeraSono
- シナリオ:詠野万知子
- イラスト:かにビーム
- 声優:藤田茜
- 年齢指定:全年齢
- 収録時間:約1時間45分 ※特典トラックを含まず
※2024年7月31日時点